ロケットシミュレーション
地球暦XXXX年、地球は大変なことになっていた。どう大変かって?それはさておき、この地球を救うには月軌道にあるアイテムを持って帰るしかない。ところが地球には自動運転出来るロケットや航法システムが無い。この騒ぎで失ってしまったのである。あるのはマニュアルで操縦するしょぼいロケットだけ。
「キミ、ロケットを操縦して、月まで行って来てくれんかね」
「えーっ?ロケットなんて操縦したことないし」
「でも、操縦したくてここへ来たんでしょ?」
「まぁ、そりゃそうなんだけど」
「ロケットなんて簡単、簡単。タイミングを見計らって点火ボタン押すだけだから」
「でも、ハンドル触ったことないし」
「心配いらんよ、ハンドルなんて無いから」
「えーっ? ハンドルないのに、どうやって月へ行くの?」
「このロケットは、進行方向にしか加速できないんだよ」
「それじゃぁ、どうやって月へ向かうの?」
「地球や月に引力があるから、それで勝手に進行方向が変わるんだよ」
「勝手にって」
「ボールを斜めに投げ上げると、放物線を描いて落ちてくるでしょ。一番高いところでは、その進行方向は真横になっているから、そこで加速すると地球を周回する軌道に乗れるってこと。まっすぐ上に向かって加速すると、加速をやめたら地球に落ちてしまうから、周回軌道に乗せるのが大切」
「それだと地球をぐるぐる回ってるだけで、月に行けないんじゃ?」
「月も地球をぐるぐる回っているでしょ。周回軌道に乗ったら加速してやれば高度が上がって月まで行けるよ」
「じゃあ、地球に帰るのはどうするの?」
「応用のきかん人だな、加速すると高度が上がるんだから、減速すれば高度が下がるのだよ」
「ブレーキがあるの?」
「おお、それを言ってなかったな。ブレーキはないけれど、第4段ロケットには減速ボタンがあるからそれを使ってくれ」
「先に言ってよ」
「あ、それから、減速も燃料を使用するから、使いすぎない様にな」
「へ?どして?」
「燃料がなくなると加速も減速もできなくなるから、宇宙の藻屑になってしまう」
「ヒエー」
「それから、このロケットは4段ロケットなんだが、1段から3段までは、いったん点火すると燃料がなくなるまで止めることはできん。第4段だけが自由に噴射を止めたり、減速したり出来るという仕様じゃ」